就労移行支援事業所C-POWER
WorkingSupportドーラ
「トリビア」の講義

 

岐阜県多治見市にある「C-POWER WorkingSupport ドーラ」は身体、知的、精神などの何らかの障害がある18歳から65歳の方が就労を目指して取り組む就労移行支援事業所です。

ドーラ(DOLA)とは、「Design Of Life Academy」の頭文字をとって名付けた事業所で、障害のある方が自分自身のこれからの人生と向き合い、生きるために何を学び、社会の中でどう自立して生きていくかを考え、「自分の人生設計をしていく場」です。

ドーラの講義の1つをご紹介いたします。

 【トリビア】

近年、テレビやニュースでよく見かけるようになった「SDGs(エスディージーズ)」という言葉。

「名前は聞いたことあるけど、実際にはどういうことなの?」と思っている人も多いのではないでしょうか?今回も前回に続いて「SDGs」について、みんなで一緒に学んでいきましょう。

 

SDGsとは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことで、世界の国々が話し合い、2030年までに世界が取り組むべき17の目標として2015年9月に国連総会で採択されました。この目標、実は新しいものではなく、2000年から2015年に掲げられたMDGs(ミレニアム開発目標)の目標や指標が含まれています。MDGsは、開発途上国の貧困・教育・健康・環境などの改善に一定の成果を挙げたものの、世界共通の新たな課題への対応が必要となりました。そこで、MDGsを現状に即して拡張し、先進国と途上国を問わず、世界が一丸となって達成すべき目標を加え、新たに策定されたのがSDGsです。

パーム油は、主にマレーシアやインドネシアでプランテーションという形で作られています。日本では主として食用に使われています。また、パーム油は天然の植物性油脂なので、日本では「地球にやさしい」というイメージのもと、洗剤や石鹸にも使われています。しかしパーム油は、本当に「地球にやさしい」のでしょうか?

植物油であるパーム油は、マーガリンやチョコレート、カップラーメンの揚げ油など食用だけでなく、洗剤・化粧品などの消費財にも使われる実に身近な農産物です。世界のパーム油の8割以上はインドネシアとマレーシアの2カ国で生産されています。

 

 

パーム油利用には持続可能性に関わるいくつかの課題が指摘されてきました。アブラヤシ農園の開発は熱帯雨林の伐採を伴い、農園や工場には児童労働を含む労働・人権問題があるといわれています。企業がこれらの問題を確認せずにパーム油を利用することは、SDGsの達成に逆行する恐れもあります。そのため企業には、インドネシアやマレーシアにある農園、搾油・精製・加工工場、そして製品とつながるサプライチェーンの全体をみて、生産現場での課題を把握し、改善する努力が求められています。

しかしパーム油サプライチェーンの把握は困難を極めています。最終製品から原料までサプライチェーンをさかのぼっていくと、マーガリンやクッキーなど製品の加工工場、パーム油の精製工場、パームの実から油を搾る搾油工場まではなんとかたどり着けます。しかし、搾油工場からさらに先の農園は、多数の小規模農家を含む場合も多く、追跡するのは至難の業です。パーム農園を含むサプライチェーン上の生産現場で実際に起こっている事実と、責任をもってパーム油を使う必要性にせまられる企業が知り得る事柄の間には大きなギャップが存在するのです。

2000年前後から欧州を中心に、第二世代の取組みとして、持続可能性認証が策定されはじめました。持続可能性認証とは、農園や企業が生産活動を行うにあたり、環境や労働等についてあらかじめ定められた基準を満たしていれば、認証を与えて証明する仕組みです。認証を受けた農園や企業が生産したパーム油は、持続可能性基準を満たす認証油とされます。認証の基準を定める国際的な民間非営利組織「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」が2004年に設立され、現状RSPO認証油がパーム油生産量の2割程度を占めるに至っています。RSPOを追って、2011年にインドネシア政府によるISPO、2015年にはマレーシア政府のMSPOというパーム油持続可能性認証も策定されました。

企業は、これらの認証を取得した農園や企業と取引することで、途上国のサプライチェーン管理を自社で行うことなく、持続可能なパーム油を利用することができます。この認証制度が整備されたことによって、SDGsに取り組むより多くの企業が持続可能なパーム油を選べるようになったのです。

RSPOは、GeoRSPOという認証取得企業の名前、位置と森林の分布を示す地図を公開し、認証を取得した農園が保護林地域に位置していないことなどが確認できるツールを提供しています。MSPOもまた、MSPO Traceというアプリを使って誰でも認証を受けた搾油工場や農家を追跡できるサービスや、パーム油のロット番号を入力すればそれがどの農園や搾油工場で生産されたかがわかる地図を2019年11月に公開しました。農産物のサプライチェーンの情報を企業や消費者がアプリで確認できる仕組みは、持続可能性認証のイノベーションといえます。

このように環境問題への対応については、持続可能性認証の取組みにより大きな進展がみられます。一方、人権や労働者の問題などは、日々の状況の実態把握が必要で、第三者認証機関による1年に1度などの定期的な監査のみでは十分対応しきれません。また、第二世代の持続可能性認証がアプリで示す地図や書類上での確認方法も、労働や人権については有効ではありません。現地での細やかな確認が必要な人に関する課題は、現状把握や対応するためのコストも高くなってしまうのです。

消費者や企業がアプリなどを使い、パーム油が持続可能な方法で生産されたものかどうかについて、サプライチェーン全体にわたる情報を確認することも可能となっていくことでしょう。

現在パーム油関連企業がSUSTAINというグループを作り、IT企業と技術開発を行っています。このツールが開発され、実際に運用が開始されれば、持続可能性課題の解決につながるほか、収穫物の需給情報を即時に共有して生産調整を行うなど生産性向上にも寄与するといわれています。ブロックチェーン技術の適用は、追加的なサプライチェーン管理の方策となるでしょう。

これらのイノベーションが新興国で進む背景には、パーム油の需要側企業によるSDGsの取組みの進展に加えて、先進国政府の圧力があります。2019年6月に欧州委員会は、SDGs政策目標に関連して、パーム油が森林破壊や地球温暖化に悪影響を与えているとして持続可能なバイオ燃料と認めず、輸入を削減して2030年までに利用をやめる規制を導入しました。欧州はインドネシアとマレーシアの重要なパーム油輸出先です。経済発展をパーム油に大きく依存するインドネシアやマレーシアの政府とパーム油産業にとって、欧州の懸念を払しょくすることは大きな課題となっています。

新興国が生き残りをかけて生み出すイノベーションは、新興国の農業を新しいステージに押し上げていく可能性を秘めています。将来、日本の農家にも同様の持続可能性に関わる取組みが求められるようになったら、日本はこれらの先端技術の経験をインドネシアやマレーシアから輸入することになるかもしれません。

生産国においては、非常に多くの問題が起こっています。マレーシアのボルネオ島サラワク州では、森林の伐採による熱帯雨林の減少や、先住民族の生活環境の破壊が深刻になっています。

また、マレー半島においては、子どもを含めた労働者が何世代にもわたるプランテーション内のみの生活を強いられています。もちろんこの問題は、パーム油消費を止めることで改善されるような単純なものではありません。歴史的・文化的・構造的な問題が複雑に絡まっています。

パーム油をめぐる問題を理解することは、SDGs(持続可能な開発目標)の成立の背景と意義を理解することにも役立ちます。このままでは「持続不可能な社会」をどうしたら「持続可能な社会」に代えていくことができるでしょう。

パーム油生産国の問題を知ること、そして私たちの消費生活を振り返ることが解決の一歩につながるかもしれません。

生産国の人々やその人々の暮らし、私たちの身の回りの環境などに思いを馳せ、誰一人取り残さず、地球にやさしいということはどういうことなのか、もう一度真剣に考えていきたいですね。